せろりんでーす。
Kensington Orbit Fusionワイヤレストラックボール(K72362JP)を発売日前に入手したのでおそらく日本最速のレビューを書きます。
Orbit Fusion ワイヤレストラックボールってどんなトラックボール?

ケンジントンの日本代理店よりお借りしました。開封します。

開封しました。
Orbit Fusion ワイヤレストラックボールの一番の特徴はなんといってもスクロール方式です。この機種には通常のマウスに付いているようなスクロールホイールは付いていません。

スクロールは、このボールの周りのギザギザのリングで行います。リングをグルグルと回すことでスクロールできます。このリングには「スクロールリング」というそのまんまな名前が付いていて、ケンジントンが特許をとっています。

親指で操作することになる側です。左クリックボタン、中ボタン(ホイールクリック)、戻るボタン、進むボタンとDPI切り替えボタンが付いています。

薬指で操作することになるボタンが右クリックボタンです。ただしボタンはドライバソフトで割当可能なので、ここに右クリックがあるのが気に食わない場合は変更することもできます。
全体的にエレコムのDEFT PROに似ていますね。とはいえDEFT PROはロジクールのCT-100に似ているので言いっこは無しです。
全部で5ボタンです。チルト(左右スクロール)には非対応です。
ボール径は40mmです。

裏面です。単三電池1本で動きます。レシーバーを装着しておく穴があり、携帯性が意識されています。

付属品はUSBレシーバー、レシーバーをType-Cに変換するアダプタ、乾電池、保証書(3年保証)、説明書です。トラックボールはハードに使ってるとすぐ壊れがちなので3年保証してくれるのはうれしいですね。
接続方式は2.4GHzの独自規格です。
価格は2020年9月22日の時点で(まだ発売してませんが)8500円前後に設定しているお店が多いです。
型番 | K72362JP |
メーカー | Kensington(ケンジントン) |
接続方式 | ワイヤレス(USBレシーバー,2.4GHz 独自規格) |
センサー | レーザー |
支持球 | 人工ルビー |
ボール直径 | 40mm |
ボタン数 | 5ボタン+ホイール(チルト無し) |
電源 | 単三電池1本 |
その他機能 | DPI切り替えスイッチ |
保証 | 3年 |
スクロールリングの操作感が気持ちいいぞ!

なんといってもこのスクロールリングこそがこの機種の一番の特徴です。スクロールリング技術自体は15年以上前からあるものですが、あのギミックをこの形状の機種に乗っけてくるとは思いませんでした。姿カタチだけ見れば、トラックボールオタクが妄想で描いた最強のトラックボールを具現化したような製品です。
スクロールリングはゴムの柔らかい質感で、さわり心地がよいです。回転もなめらかで操作していて気持ちが良いです。
スクロールリングを回したときの抵抗感は同ケンジントンのExpert Mouseのモノよりかなり軽めに設計されているようです。間違えて触ってしまったときの誤作動が気になるのでもうちょっと重めのほうが良いとは思います。重かったら重いで操作が大変なので、そのへんはなかなかバランスが難しいところです。
トラックボールはカーソル操作のための機械であると同時に、そもそもボールの回転の楽しさを味わうためのデバイスでもあります。ハンドスピナーみたいなものです。ボール回転の楽しさにスクロールリングの回転の楽しさも加わって楽しさ2倍です。
もちろんスクロールリングの素晴らしさは楽しいとかカッコイイとかそういう享楽的なものだけではありません。スクロールリングは、薬指、中指、人差し指のいずれの指でも操作することができます。作業の負荷が複数の指に分散されるので、スクロールを多用する作業をしていても疲れません。この形状のトラックボールにスクロールリングを詰め込むのは開発がいろいろと大変だったと思いますが、よくぞ作ってくれたと思います。
ボタンの押し心地が上質!中ボタンは慣れると最強

高級トラックボールに力を入れているKensingtonだけあってボタンの押し心地はかなり良いです。正直、エレコムやロジクールのトラックボールはボタンの押し心地が値段なりだったりしますが、この機種はかなり良いフィーリングで押ささって(方言)くれます。

普通のマウスはスクロールホイールを押すことでホイールクリック(中ボタン)機能を使うことができます。ところがケンジントンの「スクロールリング」にはホイールクリック(中ボタン)機能が付いていません。リングをいくら押したところで何も起こりません。じゃあどこに付いているのかというと、この灰色のボタンに割り当てられています。
さて、イマドキのブラウザは中ボタンを多用する設計になっています。タブを開いたり閉じたりするときに中ボタンを使うので、インターネット中毒のせろりんにとっては中ボタンの押しやすさはかなり大事です。
で、この灰色の中ボタンなんですが、慣れるまではちょっと押しづらく感じます。ボタンが非常に小さく、しかも中ボタンのすぐ下に付いている左クリックボタンとの段差がほとんど無いので、慣れないうちは押すのに神経を使います。ところがどっこい、慣れてくると普通のマウスのようなスクロールホイールを押すよりも、断然押しやすく感じてきます。
思えばスクロール(回転)とクリック(押し下げ)という相反する動作を同じ部品に担わせる今までのホイールの設計には元々ムリがあったのかもしれません。ホイールを押そうとして手が滑ってスクロールも同時にしてしまう事故を経験したことが無い人はいないハズです。
スクロールホイールにクリック機能も付けて一石二鳥を狙う設計は実は超難しいみたいです。その証拠に、トラックボール業界には、ホイールがイマイチな機種(M570,HUGE,DEFT Pro…)がメチャクチャたくさんあります。スクロールはホイールに、クリックは独立したボタンに割り当てるべきだと、われわれホモサピはもっと早く気づくべきだったのかもしれません。
おれは中ボタン(ホイールクリック)の押しやすさにめちゃくちゃこだわる人間なので、ホイールクリックをホイールに割り当てないという割り切った設計はマジで気に入りました。
ボールサイズが最高!センサーの追従性は全然ダメ
ケンジントンのOrbitシリーズは(Orbitワイヤレスモバイルトラックボールを除いて)伝統的に40mmのボールを搭載しているので、Orbit Fusionも例にもれず40mmです。

40mmというボールサイズは、ケンジントンのOrbitシリーズと、あとはロジクールのTM150くらいにしか採用されていない希少なサイズなんですが、おれはかなり好きなサイズです。
ライバルの「DEFT Pro」は44mmなんですが、アイツはボールが半端にデカいので、使っていて若干指が疲れます。一方で「M570」「DEFT」のような34mm球だと、ボールが小さいぶん軽快に動作する一方で、小さすぎて流石に精密な操作がやりにくいです。
Orbit Fusionを使ってみて、40mmというボールサイズは超よいと思いました。大玉のどっしりとした精密な操作感と小玉の軽快さを兼ね備えたかなり具合の良いサイズです。せろりんはトラックボールのボールはデカけりゃデカいほど良いと思っているタイプのトラックボールオタクですが、40mmは小さめながらもかなり良いサイズだと思いました。もっと増えてほしいサイズですね。
トラックボールのキモであるボール回転の滑らかさも普通に良いです。メチャクチャ死ぬほど良い、ということは無いんですが、合格点は余裕で越しています。細かい操作がやりやすくて快適です。

ただし、この機種はセンサーの追従性がイマイチです。トラックボールは、センサーで読み取ったボール表面の模様の動きをカーソルの動きに変換するマシンです。
センサーが貧弱なトラックボールは、ボールを高速で回転させたときセンサーがボールの模様の動きに付いていけずに、カーソルがバグって停止したり、変な方向に飛んでいったりしまいます。
このカーソルバグり現象は、程度の差はあれど割とどんなトラックボールでも発生します。とはいえほとんどのイマドキの機種では気にならない程度には解消されている問題です。ところがOrbit Fusionはセンサーがかなり深刻にイマイチらしく、カーソルバグり現象が頻発します。
おれは43インチくらいのデカい4Kモニターを使っています。そんで、感度を低めに設定して、ボールを高速で回転させまくることで素早くて正確なカーソル移動を実現しています。Orbit Fusionをそういう使い方で操作していると、たびたびセンサーがボールを見失ってカーソルがバグってしまい、正直かなり気になります。
ドライバで感度や加速度を高めに設定した上で、ボールを高速回転させないような操作を心がけさえすればそれなりに快適に使えますが、人間様が機械に合わせるのもちょっと違う気がします。
DEFT PROよりゆったりしてるぞ!パームレストは欲しいかも

Orbit Fusionのライバルになるであろうエレコム DEFT PROを横に並べてみました。
縦の長さはほぼ変わりませんが、DEFT PROは若干横幅が狭くスリムな印象です。個人的にはOrbit Fusionのほうがゆったりと作られていて握りやすいです。

写真だとよくわかりませんがOrbit Fusionのほうが背が数ミリ低いです。DEFT PROより平ぺったい形状にすることで、握ったときの違和感を無くしている印象です。

とはいえOrbit Fusionも、長時間使うなら別途パームレスト(リストレスト)を用意したほうがいいかもしれません。モッコリした形状なので、普通に握ると手首の部分が宙に浮いて少し疲れます。
手首の部分を支えるパームレスト(リストレスト)を導入するか、パームレスト付きのマウスパッドの上に乗せて使うと良いでしょう。どうせだったら、同じシリーズの「OrbitTrackball with Scroll Ring」のようにリストレストを付属品として付けてくれると良かったなあ、と思います。

Orbit Fusionには親指の付け根を置くことができる部分があります。べつにエレコムのDEFT Proをこき下ろすつもりは無いんですが(あれもホイール以外は大変良く作られているマシンです)、こればっかりはDEFT Proには無い構造です。DEFT Proを使っているときに感じた親指の疲れがかなり軽減されています。
こういうちょっとした構造のおかげで、かなりの握りやすさと疲れにくさが実現されています。非常によく考えられた形状設計だと思います。
楽しくて疲れないトラックボール
ボールとスクロールリングの組み合わせで回転の楽しさを追求しながら、よく考えられた形状設計によって使いやすさと疲れにくさを実現した良いトラックボールだと思います。特に40mmのボールサイズが気に入りました。ちっこくて軽いボールサイズを採用することで、ボールを転がしたときの指の疲れがかなり抑えられている印象です。

ボールを高速回転させるとセンサーの読み取りが追いつかなくなることだけが目立った欠点です。そこばっかりはマジで残念です。そこさえなんとかなれば100点と言っても良いくらいの出来です。
ノートPCなどの小さめのモニターを使っている人やボールをそこまで高速で動かさない人にとっては、センサーの貧弱さはそれほど関係が無いと思うので、そういう人にはオススメのトラックボールです。個人的にはセンサーのイマイチさを考慮してもかなり好きな機種です。
終わり。
せろりんでした。
この記事は、当サイトの前身「日本霜降社」に掲載されていた記事を移転したものです。
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