せろりんです。おもしろガジェットを買ったぞ!

買ったのはこれです。カメラについている交換レンズのことです。お値段6160円です。
この、どこかで見たことあるチャーミングでチンチクリンな見た目のレンズは「Utulens」です。なんとこれ、写ルンですのレンズをそのまま一眼カメラの交換レンズにしてしまった商品なのです。
写真の画質は(語弊のある言い方ですが)ほとんどがレンズの性能で決まります。つまり写ルンですのレンズをデジイチに装着すれば、それはもう写ルンですの写りなわけです。この記事はUtulensをレビューする記事です。
作例

このように写ります。色収差によってイカれた色合い、どこにもピントがあっていないボンヤリ感、どれをとっても写ルンですっぽい写りです。
ふつうの交換レンズは、画質のよい写真を得るために、精密に研磨したガラスレンズを何枚も組み合わせて作られています。
一方で写ルンですのレンズはプラスチック1枚でてきとうに作ったものなので、画質がものすごく悪いわけです。しかしローファイな画には魅力が詰まっていて、それゆえ世の中には写ルンですを好んで使う写真家も存在します。

一応スペックw焦点距離は32mm、絞りはF16固定です(写ルンです自体はF10らしいんですが、Utulensの表品ページにはなぜかF16と書いてあるのでF16になるように改造されてるのかもしれません)。
写ルンですそのものにはピントをあわせる機構が存在しないので、写ルンですのレンズはどこにでもピントが合うようなスペックになっています。
F16と言うとかなり暗いレンズで、たとえばこの曇った昼間のガソリンスタンドをシャッタースピード1/160秒で撮ろうとするとISO感度は2000まで上がってしまいます。
とはいえデジタルセンサーの画質よりもレンズの画質が圧倒的に足を引っ張っているので、ISO感度が多少上がったところでなんの問題もありません。
ちなみにおれはUtulensをEOS RPにくっつけて使っています。EOS RPは10万ほどで買えて安価なわりにセンサーがフルサイズ(フィルムと同じ面積)なのでUtulensの性能を余すこと無く使うことができます。

32mmという画角のレンズは世の中にはあんまりありません。よく使われる画角として28mmや35mmは存在しますが、32は聞いたことがないです。
おれは単焦点だと40mmを使い慣れているので、32mmは広くてなんでも写るな~と思う反面、もうちょい寄れたほうがいい写真が撮れるな、とも思います。たとえばこのシーンでは、チーズナンを手渡している店員さんの手がもっと大きく写ると良い写真になるはずです。

まあでもこうやってトリミングすればなんの問題もありません。もともと画質が悪いのでトリミングしてもバレないのです。むしろUtulensは周辺の画質が悪いのでトリミングしたほうが画が鮮明になる気すらします。

ピントを合わせる機構がないので近くの被写体を撮ると画質がかなり悪くなります。写ルンですのカタログスペックでは1mから無限遠までピントが合うことになっているものの、ジャスト1mの被写体はピンボケ感があります。
そういうときのために、Utulensには裏技的なピント調節機構がついています。
方法はきわめて原始的です。ねじを回すとレンズが本体からやや遠ざかり、近くにピントが合うようになります。
このようにUtulensではピント調節ができる一方で、写ルンですにはこの機構はありません。Utulensは写ルンですの上位互換なのです。

我が家で飼ってるサメです。近すぎて明らかにピントがあっていません。

調節するとこうなります。あいかわらず画質は悪いですが、布の質感はしっかり描写されています。
このくらいの近距離で写るのであれば、テーブルフォトもギリいけそうな気がします。
ちなみにこのサメの写真はISO感度1万で撮っています。ISO感度とはフィルムやデジタルセンサーが光を集める能力のことで、これが高ければ高いほど暗い場所でも撮れるわけです。現行写ルンですのフィルムのISO感度は400である一方で、おれが使っているEOS RPのISO感度は最高で4万です。写ルンですと同じレンズを使っていながら、デジカメは写ルンですの100倍も光を集める能力が高いわけですね。実際、晴天の屋外と室内は光の量が約1000倍も違うので、写ルンですで室内の写真を撮ると暗すぎて何も写らないんですが、デジカメであれば写ルンですの写りを維持しながら、このサメのようにしっかりと撮影できます。このサメの写真は、デジタルだからこそ実現できる写真なのです。

こういう特に変わったことのない構図であっても、Utulensならレトロに写るので、かなりそれっぽくなります。ここはハワイなんですが、親戚のおっさんが30年前に撮った新婚旅行の写真であると言われても違和感はありません。

これはおれ独自の写真論ではありますが・・・、Utulensがレトロに写るという発言には若干の間違いがあります。Utulensはレトロで旅情たっぷりに写るレンズではありますが、べつに写ルンですの写りそのものがレトロで旅情たっぷりなのではなく、昔の旅行の多くが写ルンですで撮影されているだけの話なのです。
人間には写真を通して過去の思い出を修正する機能があります。だから白黒写真でしか撮られていない昭和初期の光景は白黒で想像しがちだし、カラーネガで撮られがちな平成初期の光景はカラーネガフィルムの色で思い出しがちなわけです。たとえば坂本龍馬は間違いなく我々と同じカラーの人物であったはずですが、我々が思い出す坂本龍馬は有名なあの写真のようなボヤっとした白黒で生きていたような気がするのです。そして我々は、携帯が水没してデータがクラウドに残っていない時期の思い出のほとんどを忘れています。われわれの思い出は、それを撮った写真の写りによって決定されるのです。
ハワイは活気あふれるグローバルなリゾートなので新しいものばかりが集まります。そこをあえて写ルンですの画で撮ることによって発生する記憶と写真のギャップのおもしろさは、他のレンズでは体験しえないものです。おれが思い出すハワイの思い出は、いつかおそらく写ルンですの写りに書き換わるはずで、この奇妙な感覚を無限に体験できるのはUtulensだけです。
開封するぞ!
ここからは開封の様子や詳しい製品仕様を見ていきます。
商品は筒の中に入っています。

おれが買ったのはRFマウント用です。RFマウント→M39マウントの変換アダプタと、M39マウント用に作られたUtulensが付属します。マウントアダプタさえあれば他のマウントでも使えるのは便利ですね。
M39マウントといえばライカレンズのマウントなので、割りと汎用性があります。6000円で写ルンですのレンズとライカレンズ用のマウントアダプタがついてくると考えればかなりお手頃な気もします。

付属のスキンシールで好きなデザインにすることができます。ただし紙のシールなのですぐダメになってしまいそうな気もします。

Utulensの良いところは圧倒的なコンパクトさです。右に置いたのはEOS RPのキットレンズであるRF24-105mm F4-7.1です。これと比べるとUtulensの小ささは圧倒的です。
フルサイズでありながら冬物のコートならワンチャンポケットに入ってくれそう(入れるとは言ってない)なコンパクトさは最高です。
おひとついかがでしょうか。

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